第19章 お出かけ
帰るのかと思いメフィストに付いてきてみれば、着いたのはいかにも高級そうな旅館の前。
『え?帰るんじゃないの?』
「誰も帰るなんて言っていませんよ?今日はゆっくりと泊まって行きましょう!」
「ようこそお越しくださいました。お荷物を…」
素早く現れたのは男衆。
流れるような所作で玄関まで案内をしてくれた。
一歩中にはいれば趣のある落ち着いた雰囲気だ。
何人かの仲居さん荷物をお出迎えをされていると後ろこら違う着物を着た女性が駆け寄ってきた。
「ファウスト様!いらっしゃいませ。この度もまた急なお泊まりで…いつも驚かさられますわ。」
「申し訳ない。今日も頼みたいのですが、大丈夫ですか?」
「もちろん。いつものお部屋ご用意しますわ。お連れ様もいらっしゃいませ。どうぞこちらへ…」
女将…。
着物の似合う日本の美人。
色気がハンパない…。
先を歩く女将とその後ろを濃紺の着物を着たメフィスト…
後ろ姿だけでも2人がお似合いなのがわかる…。
“知り合い…?”
“またって…ちょこちょこ来てるの?”
「ファウスト様、今日はお着物でしたのですぐに解らず申し訳ありませんでした。お二人とも素敵なお着物ですね。良くお似合いてす。」
「そうですか?」
「勿論です。ここにいらっしゃるのはだいぶお久しぶりになりますね?お多忙でしたの?」
「あぁ」
「今回はお連れ様もいるようなのでいつも以上におもてなしをさせていただきますわ。こちらです。どうぞ…」
先に中にはいったメフィスト。続けて入るはずのフールが動かない。
不思議に思ったけ女将はもう一度フールを促す。
「どうぞ?」
『あっ、、ありがとうございます』
モヤモヤした気持ちが沸き上がってくる…。
仲の良さそうな2人の姿を見ているうちに周りが見えなくなっていた。
もちろん、メフィストと女将の話なんか聞こえていないかった。