第14章 A・A・A
『…?どうしたの?』
さっきまでの笑顔が嘘のように消えていた。
真剣な表情でまっすぐ見つめられじりじりと距離を詰められる。
その分だけ後退ると、壁に背中が当たった。
気づけば壁とアーサーに挟まれて動けなくなっていた。
その場から逃れられないように、アーサー壁に手をついた。
フールは見上げるような角度になる。
「しかし…もっと気になることがある。なぜ君は時折そんな悲しい顔をするんだい?」
『えっ?…』
フールはドキッとした。
今まで普段通りに人と接してきたし、誰にも気付かれることはなかった。今日は特に気合を入れてこなしていた。アーサーとは今日初めて会い、1日一緒に行動はした。でもそんな短い時間過ごしただけなのに…なんでこの人は私の心を見透かしたんだろう……。
…………………
数年前から探し続けた女性だ。隠そうとしてるその表情の変化に気付かないわけがない。なにが、フールにそんなに表情にさせてるのか…あのメフィストなのか…?別のことなのか…?どうしても気になり今日別れてからもずっと気になっていた。気づけば会えるかもわからないのに、道端で待っていた……
………………
時が止まったかのようにお互い見つめあったまま時間が流れた。
沈黙を破ったのはアーサーだった。
「誓おう…私ならどんなことがあっても、あなたにそんな顔はさせない…」
初めてあったこの人にここまで言わせるなんて……。
私はそんなに沈んだ顔をしていたのだろうか?頭の中をいろんなことが巡っていく。
フールはアーサーから目が離せなくなっていた。
アーサーはまっすぐな瞳でじっと見つめてくる彼女の瞳から半分に開き誘っているかのような赤い唇に目を落とす。
それに吸い込まれるようにアーサーは無意識に顔を寄せた。
ゆっくりと近づいてもう少しでその熟れた唇に触れ……。
「おやぁ~若いカップルが道端で盛り上げっているかと思ったら。思いもよらぬ人物がいるではありませんか。
クックック。
アーサー・A・エンジェル。こんなところで逢引ですか?場所は考えた方がいいですよ??」
どこからともなく聞こえてきた声。