第13章 旅行
「ふーんここか。」
部屋に入り壁の祈祷文に視線を這わす。
「思っていたよりも凄いな。これがこの村の信仰か。ここにいる屍はこの祈りが効くんだろなぁ?」
「これで屍を退治できるのね!すごいわ!」
マリアが喜んで見せる。
…………。
「もう芝居はしなくてもいいぜ?」
「!? なんの、こと?」
マリアの額に冷や汗が流れ落ちる。
「この下にも魔法円あるんだろ?」
足元に視線を送り足のつま先をコツコツ鳴らした。
マリアの顔色は一瞬悪くなり俯いた。
薄暗く誇り臭い部屋に沈黙が起きる。
フッ…
マリアの口元から息が漏れる。
「…………それは私のではないわ」
「私は体に刻んでいるんだもの」
「……ふぅ―」
フジモトはタバコをふかす。
「さっきのはお前の屍番犬だろ?」
フジモトの視線は一層鋭さを増しマリアを見る。
「そうよ。とってもかわいい子でしょ。初めて作った子だから少し不格好だけど……。あんなに攻撃されて本当にかわいそう……私の体の一部を抉られてる気分だったわ……」
屍番犬を思い恍惚としている。
その表情は気味が悪くゆがんでいる。
「で、いつから疑ってたの?」
「初めからだよ。お前が目的だ。」
「?!どこかで会ったのかしら?」
「死体安置所。お前はうっとりと死体を見ていたから気づいていなかったみたいだな。」
「いろいろ甘いんだよ。クソ忙しいのにこの村に頻繁にバカンス……なぁ結界の中にあるお前の車はなんでタイヤが切られてんだ?他にも……」
フジモトは堰を切ったように不審な点を言いあげた
「フッ…そんなに怪しかったのね…うまくやっていたと思ったのに。最初からお芝居だとわかっていたなんて……私、滑稽だったでしょう……」
情けないわね……と悲しそうに笑った。