第13章 旅行
ポンッ☆
カタコンベに入るための扉の前の小さな空間にピンクの煙の煙があたり一杯に立ち込める。
『メフィ…バレないように移動してるのに。こんな目立つ煙出したら上に見えちゃうよ』
「失礼☆」
てへっ☆と可愛くとぼけて見せるメフィスト
……
『獅郎にバレたら絶対に怒られるんだから…』
重厚な扉にはしっかりと鍵がかかっている。
メフィストは胸のポケットから鍵を取り出した。
正十字騎士団の中でも持っている人物の限られる鍵。
無限の鍵だ。
どんな扉も開けられるその鍵を目の前の鍵穴に差し込んだ。
ガチャリ。
重さのある扉を開け中に入る。
「ビンゴ☆」
フールは部屋に入るとポンッと人間に戻った。
そこは上の主聖堂と比べてもひどく古い。
そして長い間誰も来ていないことを思われるほど埃臭い。修復をしているように装っていただけでそのような気配は微塵もない。
「ここが拠点みたいですね。」
『凄い…とても古そうだけどきれいに残されている…』
部屋の中は、この土地に古くから伝わっているであろう信仰が伺える。
四方の壁一面にぎっしりと見たことのない祈祷文が刻まれている。
屍に主の祈祷が効かなかったのはこれが原因だろう。
この土地に古くから伝わる独自の信仰に代って埋葬された死体だからこそ主の祈りは通じない。
足元を見ればには埃が積もっているが、最近誰かが訪れたような形跡も残っている。
おそらくこの床の下には魔法陣が書いてあるだろう気配を感じていた。
さっき、マリアが、頭を撫でたときに香水の香りの混じって香ってきた血と硫黄の臭い。猫の目線だったからこそ見えた修道服の下の腕に刻まれた刺青。
『彼女の腕には陣が刻まれていた…間違いなく彼女が屍を喚んでいる…』
フールのいる方とは逆の壁を眺めていたメフィストは顔だけを向けた。