第1章 帰って……きた?
待っていても一向に起きる気配が無いのも、いつものこと。
毎度ながら、失礼しますと主の部屋の戸を開けた。
起きているとはよく言ったもので、未だ布団にくるまりすやすやと寝息をたてていらっしゃる。
たいへん可愛らしいお方であり、また少々手を焼かされるお方なのである。
投げられた枕を拾ってから主の頭を少し上げてやり、その隙間にそっと置く。
そうすると、彼女はいつも目を覚ますのだ。
「あ……数珠丸」
「おはようございます」
「すぐ準備するから、待ってて」
「はい」
このようにドタバタと準備が始まるのも、これがないと1日が始まらないと刀剣たちが笑うほど見慣れた光景だった。