第1章 帰って……きた?
「おまたせ!」
スパン!と開かれた障子から勢いよく現れた主は、寝起きの可愛らしさが抜けて、綺麗な大人の女性の雰囲気を漂わせていた。
きっと化粧を済ませているからだろう。
「では、朝餉に参りましょう」
まだぼやけているのか、足元のおぼつかない主の背に手を当てた。
「おや……おはようございます」
うーん、と目をこする主に、こすってはいけませんと言っている途中、後ろから宗三左文字が声を掛けてきた。
「おはようございます。今朝は遅いのですね」
「ええ……。朝が苦手なんですよ。彼女ほどではありませんが」
きっと、彼を起こしている小夜が朝餉の支度へと早々に部屋を出たためだろう。
彼らの兄弟仲には、粟田口のそれとは何か違うようなものを感じている。