第1章 帰って……きた?
「主君……あの、お話します。実は」
決意を持った目を私に向けた前田くん。
彼が口を開いたと同時に、障子も開いた。
「よお!主」
真っ白なその体躯は、鶴丸国永のものだ。
せっかくいいところだったのに、何の用だろうか?
「どうしたの?鶴丸」
「いやぁ、光忠から団子をもらってな。主もどうかと」
「ほんと!やった!前田くんも行こうよ」
「い、いえ…僕は内番に戻ります。すみません」
「そっか。じゃあまた今度ね」
「はい」
「では主、先に桜の大樹が見える縁側へ向かっていてくれ。小烏丸も待っているから、すぐに分かるはずだ」
「はーい」
おやつの知らせにたいへん気を良くした私は、先ほど大事な話を聞きそびれたのも忘れて小烏丸のもとへ向かった。
「前田」
「……」
「話さないと約束したはずだ」
「しかし……主君はとても気にしていらっしゃいます。
悩んでもおられるようです。
主君のためを思っているとしても、あのままでは……」
「まだ政府にはバレちゃいない。
この書斎を教えたことだって、本当は……。
いや、いい。
もう、言うなよ」
「……」