第1章 帰って……きた?
私の名は、数珠丸恒次。
この本丸に拾われてから1ヶ月と経っていない、所謂新参である。
とは言ってもこの本丸は、建造されてから3ヶ月だそうで、ここ自体も随分新しいようだ。
それを思えば、大して新参でもないように感じる。
「主、朝ですよ」
ここの主はどうにも摩訶不思議な方で、珍しいと言われる刀剣が発見されると、それをことごとく引き寄せてしまうのだという。
その実績は、審神者の間で少し噂になっているそうだ。
「主……今日の朝餉は短刀等が一生懸命作ってくれた煮付けですよ……」
そしてここの主の最大の弱点は、朝に弱いことである。
起きてしまえば寝るまでとても元気だが、その起きるまでがまた一苦労なのだ。
「起きてるってば〜!」
はんばムッとした声と共に、障子に何かボスっとぶつかる音がした。
主の悪い癖はこれだ。
寝ぼけて枕を投げてくるので、もはや誰も障子を開けて起こそうとはしない。