第1章 帰って……きた?
その日は宴会だった。
会う刀剣会う刀剣に、驚かれてはぺたぺた身体を触られた。
泣いて喜ぶ者もいれば、心配して怒る者もいた。
だが誰も私に対して攻撃的ではなかった。
私は本当に、ここの主なのかとさえ思えてしまう。
日も落ちて喧騒も落ち着いた頃、一期一振が弟の短刀たちを寝かせると言い、大広間を去った。
見た目の若い刀剣が部屋に律儀に帰った後は、お酒の回った年長組が自然と残る。
次郎太刀や獅子王がすやすやと眠る中、私の隣には御手杵が座っていた。
「主は今まで、何やってたんだ?」
御手杵は酌を揺らしながら、目を細めて月を眺めている。
その問いに棘はなく、純粋な疑問であると受け取れた。
「学校行って、勉強して……友達と、遊んで」
それ以外、何をしていたっけなぁと考えたが、特に何も浮かばない。
じっと黙ってしまう。
御手杵からも特に返事はなく、穏やかな時間だけが流れていく。
「俺たちの知らない主……かぁ。今のあんた、俺分からねえよ」
未だ酌を傾けることをせず、御手杵は私を見た。
私にも分からないことを分かるはずがないよなぁと、私は変に納得してしまった。