第1章 王子、恋を知る。
何が何だか分からないまま、私が連れてこられたのはバカでかい衣装部屋。
綺麗なドレスから艶やかなドレス、可愛らしいドレス……。
様々なドレスが所狭しと陳列する中で、私は呆然と立ちすくしていた。
今、部屋にいるのは私とレオンだけ。
その他の3人はレオンの意思により部屋の外へ待機させられていた。
ゼロなんかは特にそれは出来ないと噛み付いたけれど、それでもレオンは考えを変えなかった。
殺されるわけでもなくこんな場所に連れてこられたということは、何か高いものを私に着せようとしているに違いない。
きっとこの中の気に入ったものを選べと言うに決まってる。
でも、なぜそう対応を受けるのかは一切不明なのだが……。
「この部屋の奥に、シャワーがある。ひとり用だから少し小さいけど、まずはそっちに行っておいで」
入口付近の椅子に腰掛けているレオンが言う。
戸惑っている私は返事もそこそこに浴場へ向かうが、部屋が広すぎて奥がどこを指しているのかが分からない。
ようやく見つけた扉を開くと、ひとり用とは思えない広さのバスルームが姿を現した。
上品な黒で統一されたタイルの奥に、丸く大きい浴槽がある。
あらかじめ用意されていたのか、湯には真っ赤な薔薇の花が浮いていて、優しい香りがバスルームの中に充満していた。
配慮してくれたのか、お湯で温度を慣らされたタイルに水滴が付いていたが、滑りにくい質感のようだ。