第1章 王子、恋を知る。
「今日は、土曜……だから……昼まで寝る」
何度か不愉快そうに唸った後、突然声を上げて起き上がった。
どうやら敵意はないようだが、まだ信用出来まい。
レオンはと言えば、私がまくし立てた質問をしっかりとひとつひとつ少女に聞き直している。
それも床に膝を立てて。
王族であり気高いレオンが、身元の分からないような少女に膝を立てて話を聞くなど、今までにないことだ。
「兄さん」
困惑した様子の少女を残しクラーケンシュタイン城に戻った私たちは、少し休もうと執事に紅茶を淹れさせた。
そこで私は、レオンの思わぬ発言にティーカップを盛大な音を立てて割ることになる。
「兄さん……あの子をメイドにしてみない?」