第6章 荒北の番犬は荒北
2人が同じ部活になり、噂は内容を変え再熱した。
「荒北に脅され入部したらしい」
「やっぱり同じ荒北らしい」
そして、名が荒北を叩いた事も
「あの荒北を叩いたらしい」
「あの荒北を従えてるらしい」
「女も強いらしい」
そう噂された結果
「「荒北はWでヤバイ」・・・・って事になってるけどメイってそんなに強かったっけ?」
とお昼休みにアヤがそう言う。
「知らないよー」
名がうんざりと言った顔でお弁当を口にし、
「しかし、本当によく荒北が叩かせたものだな!」
「止められた時のメイの怯えっぷり、ほんとに笑えた」
と東堂と新開が言う。相変わらず名達は自転車部と昼食をとっており、
「全く、どんな1年生生活を送ってたの!!」
と、隣に問いただすと
「・・・・知るか。」
と、荒北が一言。
あの日以来稀に、本当にごく稀に荒北は共に昼食をとるようになった。
「私、飲み物買ってくる。」
名がそう席を立つと、荒北が俺もと席を立つ。
ざわつく食堂。だが、それは
「W荒北だ・・・」
と言うもの。
皆さりげなく荒北を避け、道がひらける。
「噂は本当なんだ」と、「一緒に居るところ初めて見る」と。そこで気づく。確かに荒北同士で歩くのは初めてで噂が再熱中な事もあり、こんな事になっているのだ。
「俺、自販でいい」
購買前で荒北はそう言って名と分かれ、荒北は先に帰ってしまうだろうと思っていたら、なぜか手ぶらでレジ近くの出口で待っていた。
「おっせ」
近づくなりそう言われ、それでも男の子に待ってもらうなんて名にはあまりないことで
「ごめん荒北君。あれ、飲み物は?」
と、荒北にきけば、なかったんだよとむすっとする荒北に残念だったねと
「待っててくれてありがとう」
と言うと、荒北君はこちらを見てあぁとぶっきらぼうに答えた。帰り道も相変わらず周りは珍しげに2人を見ており、時たま喧嘩をふっかけて来そうな学生も居たが、荒北はそんな奴等も気にせず歩いており、名は福富との約束を守り、相手にもしない余裕そうな荒北に
「本当、どんな1年生だったの」
と笑うと
「うっせ、ほっとけ」
と顔を見ずとも、それを笑いながら言っている荒北を少し嬉しく思った。