第6章 荒北の番犬は荒北
名が入部してしばらく経ち、荒北と区別するために名前で呼ばれるようになった。
「メイ!ボトルだ!」
「東堂君の担当は私はありませんので!!」
そう返せば
「荒北ばかりずるいぞ!!」
と言う東堂に
「「ズルくねーよ!」」
とW荒北。
荒北を怖がる荒北を担当する後輩の代わりを名がかって出たため、名は練習中だけは荒北専属になり、周りも荒北同士だしとなぜか暗黙の了解であった。
「私だって日々のメンテがあるんです!いい迷惑だ!!」
そう言えば
「迷惑って何だ、あぁ?!!」
「あ、聞こえてた」
と名が笑って終わるのがW荒北の調子だ。
そんなある日、アヤに
「最近、荒北とずっと一緒だからメイの周りに男子達が近寄れないって有名だよ?!」
そう言われる。
「は?」
「有名だよー。荒北が荒北の番犬してるって」
「なっ・・・」
「友達でメイの事諦めた子とか居るよ?」
アヤちゃん曰く、私が1人の時を狙うと必ず荒北君が現れるそうだ。
確かに、荒北君はよく教科書を借りにきて、昼食では隣に居るし、部活は荒北君も私も遅いので一緒に帰るとなると、確かに多い。
「荒北君は私の番犬なの?」
昼休み、荒北にそうきいて吹き出す周り。
「は?しらね。」
だが、荒北は平然としていた。
名チャンに番犬かと聞かれた時、むしろお前の方だろと思った。ホイホイついてくるし、待てと言えば待ち、貸せと言えば貸す。けれど最近じゃ噂が再熱して、また変な奴に絡まれないかと心配で自分からも近づいている。・・・はっ、そしたらやっぱ、俺も番犬か。
「ふっ」
そう笑うと
「え?!なんで荒北君が笑うの?!」
と名がきいてくる。
「いや、名チャンの方がアキちゃんみてぇ」
「アキちゃん?」
「俺んちで飼ってる犬の名前」
「え?私、荒北君の飼い犬なの?」
「番犬ではねーな」
そんな会話を食堂でするものだから、荒北が荒北を飼ってるそうだと噂は広がり、叩いた事も相まって、実は女荒北の方が恐くて、あの荒北さえも番犬として飼っていると広まり、聞き付けた部員達には大笑いされた。
「・・・・・良い迷惑だぁぁぁぁぁ!!」
「っせ。」
それがチャリ部のW荒北。