第8章 荒北の荒北は荒北さんの荒北
「じゃあぁ!もう離れんじゃねーぞ」
そう言われ立ち止まった名を見失い、荒北が後ろを振り返る。
「どーした」
「ずっとって、ずっとって事?」
聞きたい。その口からきちんと。自分をどう思っているのか。自分も荒北をどう思っているかきちんと言いたい。
「ヤだったらい」
「嫌じゃない!嫌じゃないよ荒北君!」
荒北が言いかけているところに全力で否定する。
「そーかよ」
「そーだよ!荒北君は?荒北君は私で嫌じゃないの?」
「嫌だったらとっくに離れてんよ」
笑いながら言う荒北に、冗談か本気かわからず、荒北の近くにいき
「私が好きって事?本当に?」
と荒北にきけば
「ホント、ホント」
と名が来たことを確認して歩き出す荒北。
「私は荒北君の事好きだよ!」
それを聞いた荒北は驚いた顔で名を見てから
「もう離れんなよ」
と満足気な笑みを浮かべ、名の頭を撫でた。
「これは・・・・荒北君も私が好きって事だよね」
予想外の展開に事を整理しながら部室へ向かう名。
「って事は両想いって事だよね?」
「そーな」
「ずっとって事はお付き合いするって事だよね?」
「そーーな」
「って事は彼氏彼女の関係って事だね?」
「わぁってるよ!いちいち言うな!恥ずかしい」
照れる荒北の隣では恥ずかしがる名。
「荒北君照れるんだねっ」
「なんでお前も照れてんだよ!」
「へへっ」
するとまた頭を撫でられ、嬉しくなってしまう。
「は!婚姻届出しても実感湧かなさそう!」
「気が早すぎんだろ名チャン!」
「え?でもそーゆー事でしょ?」
と真顔で言ってくる名に、あの時感じたずっとついてくる臭いはこういう事だったのかと思った。
それからと言うのも、おかげでまた要らん噂が流れたが、名チャンはそんな噂もだったら凄いと笑い飛ばしていた。部活では勿論ひやかされまくり「荒北さん」と面白がって俺までさん付けで呼んでくるようになった。
「荒北さん」
名チャンもその内の1人で
「お昼にしましょ」
と語尾に音譜でもつきそうな具合で言ってきては昼休みを共に過ごす。
変わらぬ日々。
付き合うというのはこういう事でいいのか不安もあるが、
考えても考えてもお互い
心地好く思う場所は
相手が荒北な事である。
end