第5章 新開と荒北さん
部活に行くと、うちのメンテが寿一といた。
「ヒュー♪」
寿一が女の子といるなんて珍しい。
荒北名ちゃん。靖友と同じ苗字の女の子。
見た目も中身も大違いなのにW荒北なんて言われ、今では同じ部活になったために前より有名になっている。
「初のバイクはどうだった?」
ローラーから降りたところに声をかける。
「世界が変わった感じ。普通の自転車と全然違う。やっぱり乗ってるとメンテするにも違うんだろうね。」
寿一に礼を言ってる姿を見ているとつくづく靖友と同じ苗字なだけだと思う。
「靖友と同じなんて可哀想にな」
と笑えてしまう。
「ひどい言われようだなぁ」
「でも、寿一に拾われた辺りはそっくりだし、名ちゃんも靖友と同じでロードバイクにはまっちゃったんだな。俺とも同じだな。」
そう言うと、名ちゃんは照れくさそうに笑った。その笑顔が妙に可愛く思え
「名ちゃんの笑顔ヤバイな」
つい口に出ていた。
「お世辞を言っても何もないよー」
そう照れる名ちゃん。
「いや、本当にそう思ったんだって」
名ちゃんはさらに照れていって、それが面白くて
「あ、よく見ると名ちゃん意外と胸もあるんだな」
「ちょっ、新開君!?どこみてんの?!」
「いやぁ、名ちゃんいじるの面白いな」
そう1歩近づくと、名も1歩下がる。
1歩、2歩、3歩とやっと、新開君が止まったかと思うと後ろの戸が開いて
「なーに名チャンいじめてんだ新開」
と荒北君が入ってきた。
「今、名ちゃんのスリーサイズ聞いてんだ」
「ちょっ!新開君、教えないよ?!!」
「あぁ?なにやってんだ新開!名チャンに迷惑かけんな!!」
と一喝してくれた。荒北好みだ!と思っていると、
「で?いくつなのー?」
ときいてくるので軽く、軽くだよ?軽く荒北君の口元を叩いてやった。
そして、はたと気づく。
相手は荒北君だ。
今、私、叩いたよね?叩いてしまったよね?あろうことか荒北君を叩いたよね?!??!?
(やっちまったぁぁぁぁぁ!!!)
荒北君を見ると口元がニヤリとした。