第4章 福富君と荒北さん
荒北さんと言い、荒北と言い、荒北とつく奴はロードに魅せられるのだろうか。
噂でしか聞いた事がない荒北さんが部活動に現れて、宮田とのやり取りや作業を見ていて彼女なら宮田のサポートとして良いと思い勧誘した。
「部活は無理してないか」
昼休みの時間、食堂に移動中の荒北さんを見つけて声をかけた。
「福富君!どうしたの急に?!」
「む、無理に誘ってしまったのではないかと思ってな」
と福富がそう言うと焦りながら弁解する名。
「確かに宮田は鬼だけど、皆のバイク預かる以上、皆の命預かってるようなもんだからキツいのは当たり前で、むしろ私が覚悟が足りてなかったっていうか、いや、覚悟はあったんだけど!なんていうか!!」
隣で言葉を探している荒北さん
「無理をしていないならいいんだメイ」
そう言ってやるとメイは苦笑し、そしてふふっと笑った。
「呼び方、東堂君のが移った?」
「・・・荒北と区別をするためにな」
「そっか」
そう俺に言われると不思議な感じだとまた笑っていた。
宮田を鬼と呼ぶ辺り本当に厳しいのだろう、だが命を預かるという覚悟ができている事に良い指導を受けていることも理解した。
普段からの東堂とのやり取りを見ていても困ってはいなさそうだし、他のメンバーともうまくやっていそうだ。
「まぁ入部に関しては大丈夫よ。ロードは奥深いね。乗れたらもっと楽しいんだろうねぇ」
と隣を歩くメイ。
確かに宮田はメンテ担当だが部の練習には参加している。その間、名にはマネージャー業もやってもらっている
(乗れたらメンテにも役立つんだろうな。宮田羨まー)
そんな事を思って歩く名に
「今日・・・」
「ん?」
「今日、部活前にローラーを回してみるか?」
そう福富が言うと、名が目を見開いて
「いいの?!女子なのに?!いいの!?」
「部活前ならいいだろう。ロードに男女もない。」
福富君はそう言ってくれた。
その日、部活前に乗ったローラーはもたついて、福富君の肩をかりて乗るしかなかった。
男子に肩を借りるなんて今までなくて、なんともなさそうにしている福富君をみてドキドキしてるのは自分ばかりかと余計ドキドキしてしまった。