第3章 東堂と荒北さん
メンテ担当として入部してきた名。
「東堂君は本当にクライマーだね」
今では簡単な点検が出来るようになり、たまに俺のバイクも見てもらっている。
「ふふん。山神だぞ!当たり前だ!」
「タイヤの減りがクライマーっぽい」
「・・・すっかりメイはウチの部のメンテだな!」
そう言うと、でしょーとこちらに顔を向けて笑うメイ。
メイは特段可愛いわけでも、美人なわけでもなく、俺の隣に置くとなるとまぁ、普通だ。だが、
(その笑顔は反則だ!!)
と翻弄されてしまう。
メイは荒北と同じ苗字を持つだけあって、入部する前から全く俺に興味を示さない。帰りに声をかけても手を振り替えされて終わってしまう。
(普通、女子なら喜ぶところだろう!)
この前の練習中だって、
「東堂様ー!きゃー!」
こうやって、女子から黄色い声援がかかってもこちらには目もくれず、黙々と作業をしていた。
全く、女子ならもっとこう、こう人気がある者に声をあげるものだろう。全く。
「全く、貴様それでも女子か!」
そして今、名がローラーで練習中の東堂の目の前を通った事を良いことに東堂が名を指して言い放つ
「いきなり失礼だなぁ」
笑いながら言う辺り、名に凹む気配は全くない。
「メイ!なぜ俺になびかん!」
さらに東堂がそう言えば、名は少し考えて
「格好いいよ?」
と一言。そして
「東堂君はなんたって山神だからね!格好いいよー!」
と笑顔で言う名に
「そうだろう。・・・そうだろう!」
とテンションがあがっていく東堂。
「俺は格好いいからな!」
「うんうん。」
格好いい、格好いいと言いながら作業に戻る名と
(やはり俺は女子から人気だ!)
と浮かれる東堂。
実はこのやり取り、既に数回目。
(((よく飽きないなぁ)))
と、部員達はその度に2人にそう思うのだった。