第1章 我が学年の荒北は二人
ロードに興味が湧いたと東堂君に言うと、東堂君はロードの話をたくさんしてくれて、そんな時の東堂君はキラキラ度が増して、一緒にキラキラしている気になった。そんなある日、わたり廊下で2年になって初めて荒北君とすれ違い、すれ違い様に
「いつも東堂が悪いな」
と言ったものだから、つい
「荒北君!」
なんて呼んでしまい、まさかの面倒そうな表情ではあるものの、ちゃんと振り向いてくれたのも嬉しくなり
「東堂君のおかけでロードを知れました!ありがとう!」
とお礼を言っていた。
そうだ、東堂君に話してもらわなかったらただの自転車としか思わなかった、荒北君と同じ苗字でなければ東堂君には話しかけてももらえなかった、同じ苗字でなければ荒北君が変わった事も気にしなかった。だから、だから、お礼だった。
「名前!」
「え?」
「名前は?!」
と聞かれ、きょとんとなる。
「ややこしいからー」
そういう理由かと慌てて名前を言えば、
「名さんもロードやんの?」
ときかれる。首を横にふれば「あっそ」と「お前ひ弱そうだしなー」と笑い飛ばされた。
それを機に「荒北同士仲よくなったのか!」と、東堂君とはさらに距離が縮まり、お昼も共にとるようようになり、隠れ東堂ファンだったアヤちゃんは大喜び。最初、東堂君だけだったのが気づけば自転車競技部のメンバーとの昼休みになった。荒北君はいなかったが、会えば声をかけあう仲にはなった。
「荒北さーん」
一瞬教室の空気が変わる。だってそうだろう。あの荒北がまさかの荒北をご指名で、わざわざ別のクラスに来たのだ。
名が近寄ると、ただ教科書を借りにきただけだそうで、
「なんか変な感じな」
と面白そうに笑う荒北君を見て、返しにきた時また荒北君は私をよんで、私はこそばゆく思うのだろうかと少し嬉しくなった。
しかし、教科書は返ってこず、クラスに行けば部活に行ったとの事。教科書がないと宿題に困るのでしぶしぶ部室へ向かう。初めて自転車競技部の部室へ行くなぁと思いながら道を歩いていけばすれ違うバイクの数々。部室つくと窓ガラス越しに懸命にバイクを漕ぐ荒北君達の姿。
近くにいた1年生に声をかけるとまだまだ終わらぬ様子、時間もあるので了承を得て待つことに。
これが、私の自転車競技部に入るきっかけとなった。