第1章 我が学年の荒北は二人
「荒北ぁぁ!荒北聞こえてんのかぁ?!」
絶対に自分を呼んでるわけではないと思いながら振り向こうとすると
「んだよ!うっぜ!」
と、ヤンキーが返事する。
あぁ、やはりそちらの荒北か。
「名も災難だよねー」
お昼の時間、目の前に座るアヤがお弁当を食べながらそう言う。
私と同じ苗字の荒北君はなかなかのヤンキーで、同じ苗字の私は有名だった。
一度、同じ廊下を歩いていた時に名前を呼ばれた事があり、振り返り様にお互いあぁ、こいつが荒北か。と思った事がある。2年になり荒北君は更正したので名前も落ち着くかと思いきや
「荒北なんぞと同じとはな!!」
と、同じクラスのイケメンに話しかけられ、きけばなるほど自転車競技部の方。そうして、東堂君と話す機会がふえたある日の帰宅時間、
「荒北さぁぁぁん!」
と声をかけられ、辺りを見渡せば東堂君。スターティングなのであろう、ジャージを着た人達と並んでいる東堂君がこちらに手をふる。
「へぇ、あれが噂の荒北さん。」
「うむ、うちの荒北とは大違いだぞ」
「けっ」
新開、東堂、荒北と並ぶ3人に、ひらひらと手を振り返し、さっさと帰ってしまう名。
「尽八に興味0な感じがさすが同じ荒北って感じがする」
と笑う新開。
「確かにそこはそっくりだな。」
俺に見向きもしない女子なんているはずがないともんもんとしてる尽八をよそに、スタートの合図がした。一方、名は
(荒北君変わったな)
と、東堂の隣に居たのはきっと荒北だと思い、後ろ姿からでも真面目に部活をしているように見えた事にそう思っていた。去年を思い返すと隣のクラスで大声がきこえたかと思えば、大概廊下に姿を表すのは荒北君で、本当にヤンキーにしかみえない素振りだった。
(あんな荒北君を変えちゃうロードバイクって)
そう思った時、歩いていた隣の道路を風をきって先程の3人が抜けていった。
(よっぽと魅了的なんだろうな)
とその後ろ姿をしみじみ見送った。