第7章 迷える荒北
すっかり冬になり
「宮田、ここに着けるのどこにある?」
「さっき渡したろ」
「あれは福富君のやつだったよ」
「お前、さっきまで福富のだったじゃん。他の触る前に1度言えって!」
「・・・すみません」
名チャンはやっと俺専属担当を外れ、宮田の隣であぁでもない、こうでもないと言われながら女では珍しそうな場に集中する様になり、名チャンは皆が帰った後にバイクを整頓して帰るのが日課となっていた。俺はローラーを回し続ける日々で練習後も相変わらず倒れていて
「お疲れ様。」
終わると名チャンがボトル片手に近寄ってくる。
「荒北君帰らないと全部終わらないよー。もっと早く終わらないの?」
「お前っ、、本当に1回、回してみろ、はぁ、ふざっ、、はっ、はぁっ、くそっ!」
「ほら帰ろー」
「おまえっ、、」
タオルをかけられると名チャンが着替えにいく合図。その間に休憩し、名チャンが戻ると自分が着替えに行き、その間にバイクが整頓される。
(どっちが飼い慣らされてるか分かんねーな)
そう思いながら部室を開け
「帰んぞ」
なんて声をかければ笑顔を向けてくる名につられて荒北も口元が緩むのが当たり前になっていた。
そんな今年は東堂が皆で集まろうというのでクリスマス会を行って、東堂の隠れファンであるアヤは始終ハイテンションで
「彼氏はどーした彼氏は」
「東堂君は別なんだって」
「・・・・どこぞのアイドルかあいつは」
とその様子に呆れ気味の荒北と笑う名。
そこに福富が来て、
「メイは進級出したか?」
「福富君もう出した?」
「あぁ」
「俺も寿一と一緒だよ」
「新開君もか、私も出したよ。来年同じかもね。」
と進級の話になる。
「靖友も同じだよ」
そう新開が言って名がとっさに隣を見る。
「んだよ」
悪態つく荒北に首をふる名。毎年理系クラスは志望校に合わせての2クラスだ。希望が少なければ1クラスの時もあり、もしかしたら全員が同じクラスな事もある。
「志望校書いた?」
「書いてねー」
となれば、これはどう転んでも自分と荒北は同じクラスになる。
「来年、楽しみだね」
「そーでもねぇ」
とお互い、来年もまた並んでいる自分達を想像するのであった。