第4章 恋知りの謳【謙信】
やっと
安土に帰れるのだ。
「ようやく帰ってきたな!心配させやがって!」
「無駄な仕事増えるから…もう攫われないでよね。」
「ご無事で何よりでございます。美蘭様!」
久々に会えた政宗、家康、三成に、懐かしいような、ほっとしたような感覚。
それと同時に胸に湧き上がった
…とても寂しい気持ち。
「…っ。」
鼻がツンとして、気を抜いたら涙が出そうだと思い、すぐそこにある体温に、すがるように擦り寄った。
「なんだ。寂しかったのか?」
信長はしたり顔でそう言いながら優しく美蘭の頭を撫でた。
「……はい。」
そう答えるのが適当だと思いそう言ったのだが、
過去形ではない。
美蘭の胸の中には、寂しさと虚無感が渦巻いていた。
とにかく疲れを感じた美蘭。
「…信長様。お迎え…ありがとうございます。皆さんに会ったら安心したのか…」
だが、
心配をかけたうえ、兵まで動かしてくれた信長に、疲れた…などとは言いにくく、語尾がぼやけた。
しかし
信長は、そんなことは簡単に見通した。
「…ない頭を無駄に使うな。疲れたなら疲れたと言うが良い。貴様から素直さを取ったら何も残らん。」
相変わらずの言われようだが、信長らしい優しさがにじむその言葉に、また別の意味で鼻がツンとしてしまった。
「…っ。はい。ありがとうございます。…疲れました。」
「…ふ。それで良い。」
信長は、
手綱を引く反対の手で、美蘭を優しく抱き寄せた。
それは憎まれ口からは想像できない優しさで。
美蘭の瞳から
なんの涙かわならない
…わかりたくない
涙が一筋流れ落ちた。