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【イケメン戦国】恋花謳〜コイハナウタ〜

第4章 恋知りの謳【謙信】


美蘭を取り戻した織田軍は、


橋を渡り、

引き続き両脇を切り立つ崖の岩肌に挟まれた一本道を、安土城へ向け進んでいた。



「…信長様。」

政宗の馬が信長の馬に並んだ。


「…ああ。」

何も言われていないのに、何かを同意した信長。


「…はあ。面倒くさ。」

続いて家康が政宗が並んだ反対側に馬を寄せる。

再会して緩んだ武将たちの空気が、一気に硬化した。

「いったいどこのどちら様でしょうか?」

政宗の更に横に並んだ三成の一言で、

この織田軍のもとに、招かれざる客が近付いて来ているのだと、美蘭は悟った。


また戦が起こるのか。斬り合い、傷つけ合い…殺しあう戦が。

何度か連れて行かれた戦の記憶が蘇り、美蘭は恐怖に身体を固くした。

「案ずるな。美蘭。」

信長は、美蘭の緊張した身体を抱き締めるように引き寄せながら、話を続ける。

「…崖の上か。」

何者かわからぬが、相手にこちらの認知を気取られぬため、変わらず軍を進めながら会話する武将たち。

「そうみたいですね。音が谷で共鳴しちゃってるから…数が全く読めないけど。」

家康は淡々とこたえた。


崖の上に、今進んでいる道に並行する道があるようで、

何者か…何軍かわからぬが、その道で織田軍を追いかけてきている者たちが迫っていることだけは確か。

「まさか武田の奴等じゃねェだろうな?!」
「そうだったら卑怯にもほどがあります。」

政宗は苛つきを隠さず周囲をぐるりと見回し、
三成も丁寧な物言いには似合わぬ鋭い眼光で周囲に注意を払う。


「ふん…まどろっこしい。美蘭、しっかり捕まっておれよ。」

「…信長様?」

そう言ったがほぼ同時。

ヒヒィーン…という馬の嘶きとともに、信長と美蘭の乗っている馬が前足を上げ、

「…きゃっ!」

その場に停止した。


それに気づいた武将たちが声をあげ、

「者共、止まれ!!!」

織田軍は全軍、その場に停止した。


たった今まで辺りに響き渡っていた多数の馬の蹄や兵士たちの歩く音が止み、しんと静まり返った織田軍。



それを追いかけるように、崖の上でも、馬や兵士が足を止めた気配を察知した武将たち。


「左右、どちらにもいらっしゃいますね。」
「ああ。」
「…いったいどこの奴等なの。」
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