第4章 恋知りの謳【謙信】
謙信は
美蘭の、初めて聞く楽しげな大きな笑い声に、胸がザワついた。
その笑顔に近づきたくて
どんな顔で笑うのか確かめたくて
足早に斜面を降りた謙信。
寝転んで、うさぎたちに囲まれて、笑っている美蘭のすぐ側までやって来ると、
そのまま美蘭を見下ろした。
「あ…謙信様。」
美蘭は、
少し落ち着き始めたうさぎたちを撫でながら、自分を覗き込む謙信を見上げた。
青空と太陽を背に、
顔は影を帯びていたが、自分を見つめている左右色違いの瞳は光輝いていて、美しかった。
「可愛いですね♡」
美蘭は、可愛いうさぎたちと触れ合い満たされた気持ちを、満面の笑みで謙信に伝えた。
「ああ…愛らしいな。」
「本当に♡」
(愛らしいのは美蘭…おまえだ。)
謙信は、無意識にそう思った。
「………!」
謙信は、
無意識にたどり着いた自分の感情に驚いた。
自分が女に対して
美しいとか愛らしいとか…そんな感情を持つなど…。
何かが胸に押し寄せるような不可思議な感覚に戸惑いながらも
見たかったものが見れたことが、
…美蘭の笑顔が見れたことが、
いたく謙信の心を満たしていた。
「あ。謙信様にもうさぎが…!」
寝転がっていた美蘭が、起き上がりながら、キラキラした笑顔で言った。
ふと見れば、
うさぎたちが謙信の周りを取り囲んでおり、
中には、後ろ足で立ち上がり、前足で、謙信の足に一生懸命縋りついているうさぎもいた。
「このコたち…なんだか謙信様が好きみたい。」
「…!」
美蘭の何気ないひとことにドキリとしながらも、
「松、竹、梅。腹は満たされたのか?」
謙信は、そう話しかけながら、
その場に腰を降ろすと、あぐらをかいた。
すると3羽のうさぎが、
我先に…と、謙信のあぐらの中に飛び込んだ。
「可愛い〜♡このコたち、謙信様に慣れてるんですね!」
「俺が世話をしているのだから、当然だ。」
「そうなんですか??!」