第4章 恋知りの謳【謙信】
ずってーーーーーんッ!!!!!
美蘭は、斜面に見事にひっくり返った。
「美蘭!」
見上げれば、空。
背中には草原。
草の香りにつつまれた。
耳には謙信の心配している声が届いた。
(きゃーーー!あたし何やってんの!謙信様が見てるのに、はしゃぎ過ぎて転んじゃうなんて、馬鹿過ぎる!!)
美蘭は、恥ずかし過ぎて顔を覆った。
つん、つん、つん。
「…?!」
何かが、美蘭の脇腹をつついた。
取り乱していた美蘭であったが、
(…いったい何?)
上半身を少しお越して周囲を見ると…
「…うさぎ…っ!!?」
転んで倒れた美蘭は、
いつの間にやら何羽ものフワフワした白いうさぎたちに囲まれていた。
そのうさぎたちは皆、美蘭に詰め寄り、鼻先で美蘭をつんつんつんつん、突き始める。
「きゃ…っ!コラ!…何なの君たち…っ」
可愛いうさぎたちの謎の行動に、
もう一度周囲を見渡せば…
「あれ…これ、、、。さっき謙信様にいただいた…。」
転んだ勢いで、先程謙信から受け取った紙包みもぶち撒けたらしく
うさぎたちの狙いは、
その巻き散らかされた紙包みの中身…小さな丸い塊…だったようだ。
「これ…君たちのゴハンだったの?」
その問いに、うさぎが答えるわけもなく
うさぎのゴハンまみれの美蘭を、鼻先で突きながら、ゴハンを食べるうさぎたち。
ゴハンを探して、
腕、
足、
脇…
果ては着物の袖の中や、首筋や髪の毛の中にまで、鼻先を突っこんできた。
「あは…っ!コラ!くすぐったいよっ…あははっ!!!」
目の前には青い空しか見えない。
うさぎたちが可愛いやら、
くすぐったいやら…
美蘭は、
誰に遠慮をすることもなく、大きな声を出して笑い転げた。