第1章 梅の花 嫉妬の謳(秀吉誕生祝い2017)
「わたくしもご一緒させていただけますか?」
秀吉がもらった祝いの品を整理して、秀吉の御殿に運ばせる手配を終えた三成が、美蘭たちのもとへやって来た。
「三成くん、お疲れ様!」
ねぎらう美蘭と、
「お前のご主人様はあっちにいるけど。」
煩わしそうにする家康。
「はい。それは存じております。ご丁寧にありがとうございます家康様。わたしは歌は詠めませんので。こちらに。」
「…チッ。」
だが三成に嫌味は全く通じていない。
「まあいいじゃねぇか、まずは食え!」
政宗が母親のようにその場を収める。
「お祝いの品って、たくさんあったの?」
美蘭が、取り分けた食べ物を差し出しながら
三成にたずねると、
「はい。お祝いの品も恋文も。それはもう沢山ございました。10人がかりで御殿に運んでおります。」
「……恋文…。」
ただの楽しい花見としてこの場にいた美蘭は、
この会場に来ている女子たちの本音を知り、
露骨にたじろいだ。
「当然だろう、美蘭。ここは城下じゃない。秀吉を取り囲んでいるのは、正室になりたい女子や、娘を輿入れさせたい大名達なのだからな。」
光秀は、酒を飲みながら楽そうにそう言った。
「正室…。」
不安そうな表情になった美蘭の顔は、
その場にいる武将たちを饒舌にさせた。
戦国時代の戦と婚儀の複雑な関係を
まだよく理解できていない美蘭に
現実を教えてやる…という名目で、
いつも美蘭を独り占めしている秀吉に
ほんの少ししかえしをしてやりたい…と、
秀吉があまり美蘭に知らせたくないであろう
女性関係の話を、嬉々として話し出した。
「側室でも、構いません!って女もいるだろ。」
当然のようにつぶやく政宗。
「政宗さんが、しょっちゅう言われてますよね。」
「おま…、っ…家康!」
「先日家康様もそう言われていらっしゃるのを拝見しました。流石は政宗様と家康様。人気がおありですね。」
「お前…ほんと嫌い。」
酒も入り、少々調子づいた武将達。
彼らの言葉は、
美蘭の心ををあっけなく揺さぶった。