• テキストサイズ

【イケメン戦国】恋花謳〜コイハナウタ〜

第4章 恋知りの謳【謙信】


*・゜゚・*:・*:.。. .。.:*・゜゚・*



『…謙信様…。』



真っ白な、

何もない空間に迷い込んだ謙信。




懐かしい声が自分を呼んでいるのだが、

どこにも姿は見えない。




『謙信様…。』




声の主を探し、



周囲を見渡すと



遥か遠くに佇む女の後ろ姿が見えた。




その女の羽織っている水色の打掛には見覚えがあった。




「……伊勢姫…?」



それは


もうこの世にはいないはずの、かつての恋人。





「伊勢姫…!!!」


謙信が伊勢姫に向かい駆け出すと…





「……??!」




真っ白な世界は



突然



真っ黒な暗黒の世界に変わった。




*・゜゚・*:.:.。. .。.:*・゜゚・*




泣き叫ぶ声が聞こえる。



また姿が見えないのだが


真っ暗な中に、


男の叫び声が響き渡る。




『…伊勢姫様が寺で自害なされました。』



それを聞いた謙信は、


「……そ…だ…。」


震え


「嘘だ…!!!」


叫んだ。









「………っ……!!!」




目が覚めた。

(夢だったのか…。)



忌まわしいあの記憶を、

あの感情を、

思い出させられた。



「…っ…?!」

ようやく現実に意識が戻ったその時、

誰も立ち入ることがない己の閨に、人の気配を感じた謙信。



「何者だ?!」

枕元の鶴姫一文字に手を伸ばしながら、ガバ!と起き上がった。





「…きゃっ…。」

「…?!」



謙信の褥のすぐ隣に座していたのは…



「…美蘭?」

信玄の人質だった。




「…ここで何をしている。」

謙信は、無表情に、

だが威圧感を放ちながら聞いた。





「あの…廊下を通ったら、こちらからうなされたような声が聞こえたんです。心配で覗かせていただいたら…謙信様が…すごい汗をかきながらうなされていて…。」

少し怯えた様子で話す美蘭の膝の上には、

先ほど飛び起きた勢いで謙信が弾き飛ばしたのであろう、汗を拭いてくれていたらしい手拭いが転がっていた。





「…余計なことを。」

「勝手に入ってしまって…すみませんでした。」


そう言うと美蘭は、

手拭いを拾い上げ、部屋を出て行った。
/ 304ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp