第2章 連なる愛の謳【家康・政宗】
「診るから移動するよ。」
怪我をした場所が場所である。
診ている最中、急に誰かに部屋に入って来られでもして、美蘭のあられもない姿を見られたら堪らないし
何より、美蘭が安心して、少しでも心地よくいられるようにしてやりたいと思った家康は、
肩を抱いたまま、美蘭を閨の自分の褥の上に連れて行った。
「診せて。怪我。」
心配しているのだが、いろいろな感情が交錯して、不機嫌に見える家康の淡々とした物言いに、
「…!でも…こんな場所…見せれないよ…。」
たじろいだ美蘭は手を後ろに回して、そっと尻のあたりを隠すようにした。
「恥ずかしいのと、死ぬの、どっちがいい?」
「…へ?」
「怪我を軽く見ると…死ぬって言ってんの。」
感染症で命を落とした人間を嫌というほど見てきた家康の言葉には、説得力があった。
だが、それもわかるのだが…
「…!!!…でも…こんなとこ家康に見せれないよ…っ。」
真っ赤な顔で、目を潤ませながら、いやいやをしながらそう言う美蘭に、家康はゾクリとした。
「政宗さん…いつまでそこにいるつもり?」
邪な感情を表に出さないようにしながら、
閨までついてきた政宗に気付いた家康は、煩わしく感じて低音で睨みつけた。
「俺の責任だ。状態を知りたい。それに…そんな場所を診せるのにお前と2人にさせられねェ。」
何処かバツが悪そうにしながらも、政宗も、強く睨み返した。
家康と政宗がバチバチと火花を散らしていると
その隙に逃げ出そうとする美蘭。
「…あ!ちょっと!何処行くつもり?!」
すぐに見つかってしまう。
家康に手首を掴まれると、細い肩がビクン!と震えた。
「…っ!ちゃんと洗って着替えて…清潔にするから…。あ!お薬だけちょうだい?自分で…」
真っ赤な顔で、必死にその場から逃れようと暴れるが、
手首を掴む家康の手はびくともしない。
「却下。俺は信長様からあんたを預かってるんだから。この目で診ないとか…出来るわけないでしょ?」
「…っ!!!…でも…っ!」
信長の名前の効力は絶大で。
美蘭は一瞬怯んだのであったが
やはり、羞恥がそれを上回ったらしく、また暴れだした。