第2章 連なる愛の謳【家康・政宗】
美蘭と政宗も、
家臣たちとともに、わいわいと重をつついた。
「やはり政宗様の重は日ノ本一だな!」
「ああ、勿論だ!」
嬉しそうに美味しそうに政宗の重を食べる家臣たちを、嬉しそうに見つめる政宗。
「政宗様は、我々などにも頻繁に差し入れを下さるのです。」
「何を卑下している。お前達ほど重要な仕事をしてる奴らはいねェだろ。当然だ。」
政宗と家臣の、信頼に満ちたやりとりを微笑ましく眺めながら、美蘭も、政宗の重を堪能した。
「あ!ちょっとすみません.」
食べ終えた頃、美蘭が、1人の家臣に近寄って行った。
「やっぱり。脇の下がほつれてますよ?針と糸がありますから、縫いますね。」
木の切り株に腰掛けている家臣の前にしゃがみ込んでそう言った美蘭は、胸元から針と糸の入った小物入れを取り出した。
「そんな!美蘭様にそのようなことは…。」
「大切な貴方がたの着物にほつれなんて、あってはダメです。もしもの時に、どこかに引っかかりでもしたら大変です!…失礼しますね。」
遠慮する家臣をよそに、美蘭は、針に糸を通してほつれた脇を縫い始めた。
「こいつは言ったら聞かない。縫わしてやれ。」
「は…。それでは、有り難く。」
自分の家臣を大切に気遣う美蘭を愛しく思った。
自分の連れてきた女が、思いやりのある機転のきいた行いをしていることは、家臣たちの手前、鼻が高かった。
この女なら
美蘭なら
ずっと自分の隣にいてもいいかも知れない。
そんならことを思いながら、
胸にあたたかいものを感じながら
しばらくその様子を見ていた政宗であったが。
ふとした瞬間。
仕方ないのだが、美蘭と家臣との距離が近過ぎることが気になり出した。
更に、
一生懸命縫い進める美蘭を、間近に見つめる家臣の熱っぽい視線も、気になり出した。
(まただ…イライラする…。)
政宗は、
今朝、家康に感じた苛つきと焦燥を思い出した。
(これが誰にも渡したくない…っていう感情か。)
美蘭が家臣のほころびを縫い終わると、
二人は安土城に帰るため、また馬に乗った。