第22章 第21章 恋知りの謌【謙信】湯治編 〜車輪〜 ③
2人は、快楽の余韻を身体に残しながら、
生まれたままの姿で抱き合っていた。
「しかし…兎のためとはいえ無茶をしたものだな?」
腕枕をして、腕の中にいる美蘭の髪に口付けを落としながら、触れ合う肌から溶け合ってしまいそうな幸福感の中で、謙信が呟いた。
「だって。兎さんが椿さんに会えなくなっちゃったら大変だって思ったんです。」
「……大変…?」
「はい。…だって…兎さんにとって椿さんは、私にとっての謙信みたいな存在だと思うんです。だから会えなくなっちゃったら、大変じゃないですか。」
「……っ!」
「兎さんは寂し過ぎると死んじゃうって聞いたことありますし…っ…謙信…様…?」
突然ギュウッと抱き締められ、こめかみに口付けを落とされた美蘭。
「……ああ。こんな大切な存在と会えなくなれば…寂しさに凍え死ぬであろうな…。」
謙信の鼓動を聴きながら
髪を優しく撫でられながら
美蘭は自分の行動は間違いなかったと言われている気がして嬉しくなった。
「兎さんは椿さんと会えたんですよね?」
「ああ。」
「じゃあ今頃椿さんも兎さんも喜んでますよね?」
「ああ。」
「良かった♡」
「ああ。」
口付けの雨を振らされ、
心地良いし幸せだが、
話を聞いてくれているのか心配になった美蘭。
「んもう!謙信様、ちゃんと聞いてますか?あ!秀吉さんは…」
「…!」
秀吉の名を口にした途端、口付けの雨が止んだ。
「彼奴は怪我などもせず、問題なかった。」
甘い声から、急に低音になった謙信の声に違和感を感じながら、美蘭は続けた。
「なら…いいんですけど…。でも、平気に見えても、平気じゃないかも!だって…あんな崖から落ちたんですよ?お礼もしなきゃ…あ!その時に聞いてみれば…っ?!」
すると話の途中で
両頬に手をあて、謙信と目を合わせさせられた。
「…?…謙信様…?」
色違いの瞳は不機嫌に光っていた。
「褥の中で他の男の話とは…感心せぬぞ。」
「…っ、ごめんなさ…い…」
申し訳なく思い、
美蘭は、
素直に謝った。