第1章 梅の花 嫉妬の謳(秀吉誕生祝い2017)
「相変わらず無茶を申されるな。信長様は。みんな政務も立て込んでいるだろう。無理はしてくれるなよ。」
夕餉の後、信長が囲碁をするのだと美蘭を連れて広間を後にすると、
秀吉がため息混じりに口を開いた。
「面白いじゃねぇか。俺は美蘭に食わせる重を作る!」
政宗は、楽しそうに目を輝かせた。
「政宗さん、目的が違ってますよ。秀吉さんの宴。」
家康は、ため息をつきながら政宗の認識を正そうとする。
「しかし、大名も呼べと申されていたからな。実質、美蘭のお披露目にもなるだろう。誰しも、信長様のお気に入りの、織田家ゆかりの姫に興味があるだろうからな。気をつけたほうがいいぞ?秀吉。」
光秀は、気をつけろ…といいながら、ククッと楽しそうに笑った。
「いや、気をつけるのは、むしろ秀吉だろ。大名まで声をかけたら、いわくつきの女や、あわよくば娘の輿入れを…と目論んでいる大名も押し寄せるだろうからな。」
光秀の言葉に反応した政宗も、楽しそうだ。
「秀吉様、ご安心ください!このわたしが、政務はきちんと終わらせますので!」
三成は、1人違う心配をしている。
「……。」
秀吉は、正直気が重かった。
自分にかかわる宴を催されるとなると、政宗の言う通り、当然ながら、これまで関わりのあった大名や子女がやってくるだろう。
一夜限りの契りを結んだ女子…向こうは一夜では済ませたくないと思っている者の心当たりもある。
最近、やっと気持ちが通じあった美蘭に、そうした生々しい場面に遭遇させてしまうのではないかと思うと
憂鬱になった。
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〜3日後〜
秀吉の誕生日を祝う、花見当日。
秀吉の心とは裏腹に、見事な快晴となり
陽気も暖かく、まさに花見日和となった。
広大な梅林の至る所に敷物が広げられ、
所狭しと料理や酒が並べられて
賑やかな笑い声や話し声に満ち溢れている。
「秀吉様!お誕生日おめでとうございます!」
「秀吉様、おめでとうございます♡」
「お祝いの品を持って参りました!」
予想通り、
秀吉は、大名や女子たちから囲まれ
祝いの言葉を浴びせられ、
次々渡されるお祝いの品を、
三成が秀吉の隣で必死に整理していた。