第2章 連なる愛の謳【家康・政宗】
政宗は、少し早めに修練場に到着した。
少し離れたところから、
やたら美蘭に触れる家康と、家康を意識して赤面している美蘭をイライラしながら見ていた。
(なんなんだ…彼奴らのあの雰囲気は。)
政宗も、美蘭に淡い恋心を抱き始めていた。
はじめは、
信長をも拒む、500年後からやってきたという風変わりな存在への好奇心だった。
だが、
まっすぐで、頑なで、素直な美蘭を可愛いと思った。
そして
気づくといつもその存在が気にかかるようになっていた。
政宗は、かなり早い段階から、素直に好意を示して来たのだが、美蘭は、政宗は誰にでもそうしているのだと思っている。
正直、はじめは、気に入ったと言っても軽い気持ちだった。
だが、そうした頃から行き過ぎた表現をしていたがゆえに、
本気になった今、その気持ちが上手く美蘭に伝わらないというジレンマに陥っていた。
そんな状況の政宗である。
今朝の朝餉で、家康と美蘭の様子が何かおかしかったのを見逃すはずはなかった。
家康が、美蘭を気に入っていたことくらい知っていたが、
急に何か吹っ切れたように積極的に美蘭を構う様子に、焦燥感を覚えた。
美蘭が、喜んで受け入れていないことも明白だが、急に家康を意識し始めているのも間違いない。
「……っ!」
家康が、弓の型や姿勢を教えるためと称しているのだろうが、美蘭を後ろから抱き締めるような格好になり、
美蘭が、恥ずかしがって身体を強張らせて赤面した姿が、
政宗の視界に飛び込んで来た。
(家康の野郎…ッ。調子に乗りやがって!)
政宗は、ズカズカと修練場に入って行った。
「美蘭!」
大声で美蘭の名前を呼ぶと、
家康の手が緩み、美蘭から身体を離した。
「…政宗!」
美蘭は、ホッとした様子で政宗に視線を向けた。
「境界の見張りしてる奴らに昼を差し入れに行くんだ。もう連れてくぞ。」
政宗は、
美蘭をぐいと自分の近くに引き寄せて家康に言うと、
美蘭を連れて、修練場を後にした。