第2章 連なる愛の謳【家康・政宗】
信長、秀吉、三成、光秀を見送ると、
すぐに弓の稽古となった。
いつもは家康の御殿で稽古しているのだが、今日は、その後政宗との予定があるということで、安土城の修練場を使用することにした。
矢をつがえて的を狙う美蘭の姿を、じっと見ている家康。
美蘭は、気持ちが家康にばかり向かってしまい、集中できずにいた。
「そんな構えで矢なんか飛ばせないよ。」
「……っ?!…は…い!」
家康の声に、美蘭は怯えるように返事をした。
今日はずっとこんなことの繰り返しだ。
一方家康は、
自分を意識して、日常生活に支障をきたしている美蘭の様子に、ほくそ笑んでいた。
(ここまで意識されるとは思わなかったけど…。)
自分が、美蘭に苦手とされていることは気づいていた。
だが、それは「苦手な人」であって、「男」として意識はされていなかった。
美蘭が、徐々に心を開いて来たのが嬉しかった。
だが、美蘭が心を開いていくのは、自分だけではなかった。
他の武将たちも、美蘭を、女として意識し始めたのを感じた家康は、堪らず、心を打ち明けたのだった。
(俺のこと考えてこんなギクシャクしてるとか…堪んないんだけど。)
家康は喜びにゾクゾクした。
美蘭に近づいていくと、
美蘭の緊張感が高まったのを感じとった。
口端を上げて無言で笑いながら、
「…背筋。ちゃんと伸ばして!」
厳しい声でそう言いながら、美蘭の背筋を、手のひらでするっと撫でた。
「…ひゃあ…っ!!!」
「何変な声出してんの?」
「…ご…めん…。」
(顔真っ赤。…可愛い過ぎ。)
武将と呼ばれるようになってから、擦り寄る女は数知れず…だがこんな風に、家康が自分からどうにかしたいと思った女などいなかった。
胸にひろがる、チリチリと焼け付く感情。
「肩はこうでしょ。」
わざと、身体に触れながら教える。
「はい。」
触るだけで、ピクリとする美蘭。
「肘はこうだって、言ったでしょ。」
(もっと俺に反応してよ。)
まるで身体を開かせる交わりを彷彿とさせる雰囲気に
家康は、喉を鳴らした。