第15章 恋知りの謌【謙信】湯治編 〜恋心〜②
…翌朝。
とろけるような心地良さの中目を覚ました、美蘭。
「…ん…っ…。」
その後も共に繰り返し果てた謙信と美蘭は、裸で眠っていた。
触れ合っている肌と肌があたたかくて、今にも溶け出しそうで、
目覚めてそれが、愛しい謙信と肌を合わせていることによる心地良さなのだと実感した美蘭は、幸せな気持ちに包まれた。
これ以上なく密着しているのだが、もっともっと近付きたいと思った美蘭は、謙信にぎゅっと抱きついた。
(……しあわせ……♡)
胸の中が、あたたかいもので満たされ、
思わず笑顔が漏れたその時。
「…まだ足りぬのか?」
かすれた声の謙信に、ドキリとさせられた。
「…謙信様…?お…はようございます…っ。足りないなんて…そんな!…充分です。。。」
美蘭は、真っ赤な顔で否定した。
「俺はまだ足りておらぬ。おまえが気を失ったから仕方なく…」
「…っ。だって…謙信様が凄すぎて…っ…」
「俺の何が凄かったのだ?」
色違いの瞳が揺るぎない視線で尋問する。
「そ!…いうこと…聞かないで下さい…っ…。」
「それは出来ぬ。」
「ええ?!…どうして…」
「困った顔が愛らしいおまえが悪い。止められぬ。」
「…っ!!!」
「その顔だ。」
唇をやんわり、ちゅ…と摘まれた。
「…ん…っふ…」
ただそれだけで、2人の身体には、また火が灯りはじめた。
「織田の彼奴等が…おまえを構いたがる気持ちもわかる。」
謙信は溜め息をつきながら、美蘭を抱き締めた。
「この地にいる間、おまえが気の済むよう振る舞えば良いが…気をつけるのだぞ。」
「…気をつける?」
「…!男に囲まれているのだ。当然であろうが。」
「男…ですけど…。みんな、お兄ちゃんや弟みたいなものですよ?」
「彼奴等がおまえをどう思っているかは、わからぬぞ。」
「きっと500年先からやって来て、右も左もわからなかった情けない印象をそのまま引きずってるんだと思います。だからいつまでたっても心配されてばかりで…。」
「……。」
謙信は、
愛しい恋人の鈍感さに、また、深い溜め息をついた。