第15章 恋知りの謌【謙信】湯治編 〜恋心〜②
「…豊臣秀吉。彼奴には特に気をつけるのだぞ。」
美蘭のやりたいようにさせてやりたいと思いつつ、
織田の武将たちの過保護さを目の当たりにしたが故の老婆心が止まらない謙信。
美蘭の髪を撫でながら、つぶやくように言った。
「…秀吉さん?!」
美蘭は、抱き締められていた腕の中から、謙信の顔を見上げ、きょとん!とした。
「…そうだ。」
謙信は、真顔である。
「ふふ!心配無いですよ。安土一のモテ男が、わたしなんて相手にしませんから。」
美蘭はそんな謙信を、
なんとあり得ないことを心配しているのか…と、笑い飛ばした。
すると
「…!それが自覚がないと言うのだ。」
語気を強めた謙信に顎を掴まれ、
強制的に上を向かせられた美蘭。
「…っ…?!」
「この越後の龍を夢中にさせたのは…おまえであろう?」
色違いの瞳に熱い視線で捉えられ、
ドギン!と胸が高鳴った美蘭。
ドキドキし過ぎて身動きできずにいると、
端正な顔が美蘭に近付き
「…謙信…さま…んっ…チュ…」
唇に優しく噛み付かれた。
そして
「男の欲を思い知らせてやる。」
そう呟くと、
「…っ…んん…っ…ふ…チュ…ッ…」
また唇を奪われた。
その口付けは徐々に深まり
深く、
甘く
何度も口づけられ、
身も心もドロドロに蕩けさせられ、
そのまま、
また声にならぬ声を上げさせられた。
この時
美蘭は気付く由もなかった。
自分を本気で思い慕う男の存在が
ごく身近にいるということに。
続