第11章 恋知りの謌【謙信】湯治編〜露天風呂 後編〜
「わあ♡いろんなお風呂がある♡♡♡」
美蘭は、教えてもらった温泉に辿り着いた。
それは、かなり広い敷地の温泉で、小さな内風呂と、趣向を凝らした多種多様の露天風呂が所狭しと並んでいた。
「全部入っちゃお〜♡」
美蘭が身体を流して、まず最初に1番大きな岩風呂に入ってみると
(……………ヌルい。)
こうした温泉にありがちな、少しぬるめの温度に物足りなさを感じた美蘭は、もっと暖かい湯を求めて、源泉が流れ出ている場所を目指して湯の中を移動した。
大きな岩の陰に、源泉が流れ出ている小さな滝があり、その近くは美蘭好みの暖かさの湯だった。
「あは♡丁度いい♡」
満足のいく温度に、肩までつかりご機嫌になった。
その時
ガラッと入り口の戸が開閉した音が聞こえ、
「ここが噂の露天風呂か。確かに見事だな。」
「すっげー数の風呂!」
「絶対にコンプリートして帰りましょう。」
「こんぷ…なんだって?」
「完全制覇したいってことだ。」
聞き覚えのあり過ぎる声が聞こえてきた。
(…え?!信玄様に幸村に佐助くん??!)
美蘭は、咄嗟に岩に身を隠した。
(何であの3人がここに???!!!)
状況が掴めず、だが、自分が一糸纏わぬ姿である事だけは、ハッキリと理解できる美蘭は、見つかったらどうしよう…と、慌てつつ、聞き耳を立てて様子を伺った。
そして
「しかし混浴だっていうから楽しみに来たんだが…麗しい美女どころか誰もいないなんて、当てが外れたな。」
信玄のひとことに、美蘭は驚愕した。
(こ…このお風呂…混浴だったの???!)
「スケベなことばっかり考えてるからバチが当たったんだろ。」
「幸だってほんとは残念なんだろ?」
「は?!んな訳ねェだろ!せいせいしたし!」
「俺は敢えて言おう。残念であると。」
3人の会話はもはや耳に入らず
美蘭は顔面蒼白した。
どうしたものかと思っていると
「何だあの足首も隠れなそうな浅い風呂は?」
「あれは寝湯だ。お湯のせせらぎに身体を横たえるんだ。」
「気持ちよさそうだな。まずはあれにしよう。」
3人は、奥にある寝湯目指して歩き出した。
入り口付近には、誰も居なくなった。
(今なら気づかれずに出られるかも…!!)