第8章 恋知りの謳【謙信】湯治編 〜湯治場へ〜
唇を啄ばむように口付けを交わし
「チュ…チュ…」
お互いの舌がお互いの口内に滑り込み、
絡み合い、
「チュク…ん…っちゅ…」
徐々に深みを増していく。
お互いに顔の角度を変えながら口付けを繰り返し
「…っ…は…あ…っチュ…チュク…チュ…」
身体の芯に熱い淫らな熱が灯った
刹那
シュッ!と襖が開け放たれた。
「おっと、これは失礼。」
「??!」
2人きりの空間であるはずのこの離れに突如現れたのは
「信玄様!…と…幸村?!」
美蘭は慌てて口付けていた顔を謙信から離したが、謙信は抱き締めた美蘭の腰を離す様子はない。
「…『と』幸村って何だよ!『と』ってよ?!」
目のやり場に困りながらも、悪態をつく幸村。
「久しぶりだな。天女。」
「いったいどうして…っ…」
「おや?聞かされていなかったのか?軍神から直々にお招きを受けたんだが…こんな場面を見せつけるためだったのか?」
「…謙信様がご招待を?」
さり気なく謙信の腕の中から逃れようとしながら言う美蘭だったが、
謙信は相変わらず美蘭を手放す様子は見せずに言った。
「招待などしておらん。佐助が幸村にきちんと別れを言っていないと言うから、部屋も空いているし呼んでも構わぬと申したら…勝手に何処ぞの虎が付いて来てしまったのだろう。」
「へそ曲がりはそうは簡単には治らないか。美蘭、やっぱり俺にしたくなったら、いつでも遠慮なく言えよ?」
大概の女なら落とされてしまうだろう妖艶な笑顔を美蘭に向ける信玄を、冷めた目で睨みつける謙信。
「……っ。」
鶴姫に掛けられた謙信の手は佐助により封じられた。
「とにかく皆さん、今夜は久しぶりに宴を楽しみましょう。」
いつも通り無表情な佐助であったが、口調はどこか嬉しそうだ。
「わあ♡楽しみです♡♡♡」
「「「 ………! 」」」
満面の笑みを浮かべた美蘭に、
その場にいた男たちは皆、見惚れて顔を紅潮させた。
その男たちの反応に目敏く気づいた謙信は、
さらに美蘭の腰を自分の元へと引き寄せた。
(全く気が抜けん奴等だ。)