第1章 梅の花 嫉妬の謳(秀吉誕生祝い2017)
身体を滑らせた懐剣を蜜壺の入り口に押し当てると、
ピチャリと水音がして、
「…ん…っ。」
美蘭の身体がピクりと反応した。
探るような視線を秀吉に向ける美蘭を、
淡々と見据えながら
秀吉は、
「こういうつもりかも知れないんだぞ。」
懐剣の鞘側を、
スブリと美蘭の蜜壺に差し入れた。
「…きゃ!…ああ…っんん…っ!」
十分に潤っていた蜜壺は、
ゆっくりと、
より深くへ
ズブズブと懐剣を飲み込んだ。
突然の信じられない出来事と、それに導かれた快楽に、美蘭は取り乱した。
そんな美蘭に秀吉は畳み掛けるように言った。
「どうだ?…信長様に抱かれているみたいか?」
「…?何言っ…っ。」
そして、
蜜壺が飲み込んでいる懐剣を、激しく律動した。
「あああ…っん…あ、ああっ」
更に言葉で追い詰める。
怒りと
焦燥と
嫉妬と
不安と
…愛しさが
秀吉を突き動かしていた。
「恐れいります、秀吉様。」
「…っ!」
いつの間に部屋の前にやって来ていたのか?
障子の前に
跪く三成の影が映っていた。
「信長様が、お呼びです。」
秀吉は、
三成の声に冷静さを呼び戻された。
「……わかった。すぐ行く。」
「…美蘭…」
気づけば、
美蘭は泣いていた。
秀吉は、美蘭の蜜壺から、懐剣をヌチャリとゆっくり引き抜くと、
「…ごめんな…。」
腕で顔を隠して泣いている美蘭の頭をくしゃりとひと撫でして、
黙々と身支度を整えて、
信長のいる天守に向かうため、美蘭の部屋を後にした。
部屋に取り残された美蘭。
「ごめん…て…何…っ…。」
乱れた寝衣の前をぎゅっと閉じて、褥の上に丸くなった。
「もう…わかんな…っ…。」
そう呟く美蘭の頬を、涙がポロポロ伝い落ちた。
……わからないのは秀吉の気持ちであった。
美蘭の秀吉への愛する気持ちは、後戻りできないほど深みにはまっていた。