第1章 梅の花 嫉妬の謳(秀吉誕生祝い2017)
突然止んだ愛撫。
秀吉は美蘭の上で身体を起こして褥の極に手を伸ばし何かを探り始めた。
「…は…あ。……?……秀吉…さん?」
上がる息はそのままに、美蘭は突然様子を変えた秀吉に声をかけた。
カチャリとまた音が鳴った。
「これは…どうした?」
秀吉の手には織田家の家紋入りの懐剣が握られていた。
見た瞬間、秀吉の心臓はドクリと音を立てた。
宴の時だけでなく、自分の閨にまで持ち込んでいる様は、美蘭が大切な品として扱っているということ。
「…信長様がくれたの。」
美蘭は、頬を染めて言った。
信長から懐剣を贈られて嬉しそうにする美蘭の姿に、秀吉の心はギリ…と締め付けられた。
「織田軍に幸運をもたらす女ですって、挨拶してこい…なんて。」
「……!」
信長に心底仕えているからこそ、信長が美蘭を大切に思っていることがわかる秀吉。
無邪気で鈍感な美蘭は、この懐剣も、ただ持てと言われたから持っているだけで、その意味の重大さには気づいていないようだが、
ただの剣ではない。
織田家の花嫁が代々持った懐剣である。
(御館様は、やはり美蘭のことを…!)
そして、
美蘭のこうした緊張感の無さこそが、美蘭を憎からず思っている男たちに付け入る隙を与えているのだと思うと、美蘭に、怒りすら覚えた。
「……美蘭。」
秀吉は、
鞘がついたままの懐剣を、素肌剥き出しの美蘭に押し当て
咽喉元から腹の方に向けて身体の中心をゆっくり滑らせた。
「…っん。…な…に?」
鉄の鞘のヒンヤリとした感触が、美蘭の身体をゾクリと栗立たせた。
「これがどういうお気持ちで…信長様からお前に贈られたのかわかるか?」
明らかに不機嫌な表情で問いかけてくる秀吉に、たじろいだ美蘭。
「どういう…って?」
不安そうに秀吉を見上げる美蘭。
(……!この無防備過ぎる、可愛らし過ぎる存在には、ハッキリ教えてやる必要がある。)
そう決意した秀吉は、
臍の下にあてがっていた懐剣の先を、
更に足の付け根に向かい滑らせて行く。
「ひでよし…さん…?」