第3章 桐山照史
早上がりさせてもらい、
急いで着替えて
荷物をまとめていると
扉をコンコンとノックする音。
『はい、どうぞ』
返事をして入って来たのは、
小瀧さんだった。
「もう帰るん〜?」
さっき入ったばかりの小瀧さん。
寂しそうな顔をする
『すみません、今日は…』
「ええで。でも照史は顔コワイで」
オモロイで、見る?
と写真撮ったらしく
ポケットから携帯を出した。
本当にムスッとした顔をしてる…
「重岡って奴のこと好きなん?」
『えっ…いやぁ、友達です』
「ふは。そかそか、言うとくなー」
スキップで出て行った小瀧さん。
なんだったんだろう?と
不思議に思いながら私も出た。
「あ!ー!遅かったな」
『ごめんごめん、お待たせ』
重岡とさあ出ようと歩き出した時。
静かな店内に響いた声に
私も重岡も振り向いた
「好きです」
必死に言ったのだろう言葉。
顔が真っ赤だ。
でも店長はそちらに視線も向けず、
ありがとう、とだけ返した。
「付き合ってくださいっ」
女の人はめげずに告げたら、
店長はそれでも顔も上げずに
「んー。考えとくな」
とぎごちない笑顔でそう返した。