第3章 桐山照史
厨房のことは本当に軽く教えてもらった。
私がやることはまず無いからと
適当にしか教わらなかったんだけどね。
「はざまーす、あれ?新しい子やん」
「お前なぁ…。挨拶ぐらいちゃんと言えや
ちゃん。こいつが藤井。」
『あ!今日から働くです』
「藤井流星でぇす、若いなぁ?
高校生とかかな。俺は大学生やでー」
ぜんぶ小瀧さんから聞いたけどね
よろしくお願いします、と一礼。
「ほーら。はよ着替えてこんかい」
店長に厨房追い出される藤井さんは
のろのろとバックルームに急ぐ
ここの人達はみんな仲良しなんだなー。
「なあなあー、ちゃんって
好きな人とかおんのー?」
唐突に変わった話題に「へっ!?」と
素っ頓狂な声を出した。
ふっふ、と笑いながら
「好きな人!」
『いえ。いません…』
「そうなんやあ。学校とかには
イケメンとかゴロゴロおりそうやけどな」
『店長ほどのイケメンいませんよ〜』
ちょっとしたノリで言った言葉だった
でも店長は少し黙り込んだ
ほんのり頬も赤い。
『て、店長…?』
「俺ようブサイク言われんねんで」
へへへ、と笑い飛ばしたから
気のせいかな?と
その場は流れた。