第1章 能力の在る者
未だに二人は激しい戦いを続けている。
蹴ったり切ったりで両者とも傷が付いている、其れでも決着が着かないと踏んだのだろう。
茂木に向かって来るアイリ……。
「其の侭動かないでね……楽に殺すから」
「ひっ」
恐怖で其処から動けなくなる茂木に対しアイリは刻一刻と近づいてくる。
カオルは其れを逃がさないというようにアイリに近づこうとしたら、もう一人の二十代前半っぽい男が突然現れたというか、上から邪魔するように降ってきた。
「おっと、アイリの邪魔はさせないぜ?坊主は俺が相手だ」
「くっ、茂木、これでそいつを切れっ」
ぶんっと茂木の目の前にナイフが落ちた。
「其れで、私を切れるかしら。足が震えているようだけど?」
「あっ、こ、来ないで!」
声を振り絞り茂木は出し、ナイフを手に取った。
其れでもアイリは近づき、茂木の持ったナイフを弾き茂木の腹部を思いっきり蹴り飛ばした。
「あぐっ」
その反動で茂木の体は壁に打ち付けられ、気を失う。
「是でお仕舞いかしら?じゃあ、切り刻んで(殺して)良いわよね?」
ゆっくりと茂木の元に行き、髪の毛を右手で掴んだ。
すると…
「ふん、図に乗るな。雑魚が」
その声の主は気絶している筈の茂木から発せられていた。
アイリは一瞬固まった、その瞬間茂木の髪を掴んでいた腕が茂木によって斬られた。
「へっ、腕が………私の腕があああああ」
「ふん、其の程度でお前が私を殺すなど百年早い!!何しろ破滅へと導く《覇折れの刃》だからな」
淡々と茂木は今さっきの怯えた様な顔では無く蔑む様な目でアイリを見下ろした。
「何を………」
アイリは赤い眼をギラつかせ今にも切りかかりそうな勢いだ
「アイリ、今は一旦引いた方が良い此奴はヤバい……何かが。性格も随分変ったようだしな」
カオルと戦っていた男がアイリの元に行き、そう言った。
「待て!」
カオルは叫んで、追いかけようとしたが消えた。
「消えたか……、まあ何時か葬る者だから良いか……」
「本当に茂木か?」
「嗚呼、そうだが?ちとアレだがなカオルと言ったか、話は後で聴こう。其れと私は茂木鈴華という……能力を持つ者同士仲よくしよう。」
「先ずは、此処から離れて私の家に行くぞ。着いてきてくれ」
そう言って、その場から離れた。