第1章 待ったなし。
「ってことで、お邪魔しまーす」
可愛いかも、とか、罪悪感……とか思ってる間に、あいつはどんどん部屋の中へと遠慮なく入っていく。我が物顔だ。
「だから、帰りなさいってば!大体、あんたのお母さんとお父さんが心配す───」
「しないよ。どうせ、しない」
少し声のトーンが下がったのは気のせいだろうか。
「それよりさー、女子力なさすぎじゃない?この部屋」
「え……んな!?」
あいつは机の上に出しっぱなしの私のご馳走……スルメを一つ口の中に入れて、私を馬鹿にしたような顔で見る。
「今どきの女子大生が部屋で、しかも一人でスルメを食べてるって……知りたくなかった現実なんだけど」
「う、うるさいなー!放っといてよ!というか、帰ってってば」
私にだってプライバシーがある。
時々、今私の前にいる来斗はニセモノで、いつかホンモノの来斗が現れて、何も無かったみたいにまた人懐っこく抱きついてくれるんじゃないかって思っちゃう。でも、これが現実。今、私が見ているのが現実。
いつからだろう。
いつから、この子の性格はこんなにもひん曲がってしまったのだろう。
高校二年生のあの冬から何も変わっていない。
私にはこいつがただただ……なんだろう。ただただ…………────
ああそうか。
怖いんだ。