第2章 02
それから授業を切っ掛けによく話すようになった。
話してみて分かった事だが、苗字さんは実に話しやすい人だった。
ころころと変わる表情で軽快に話す苗字さんは友人も多かった。
俺もその中の一人なんだと思うとなんだか嬉しかった。
男女共に人気のある人だった。
冬に差し掛かろうとしていた頃からだっただろうか。
苗字って可愛いよなと話す男子が増えてきていて、そんな男共の話を聞く度に何故か異様に胸がむかむかした。
耳にすればするほどつまらない。
苗字さんが俺以外の男子と楽しそうに話をしている姿を見るのもなんだか嫌で、勉強はあまり好きではないのに、唯一彼女と過ごせる授業中が一番落ち着いた。
「それって嫉妬じゃないんですか?」
「は?嫉妬っスか…?」
再会してから改めて連絡先を交換した黒子とマジバに来ていた日、自然と口をついて出てきた話題は苗字さんだった。
なんだかんだ言いながら話を聞いてくれる黒子は、面倒そうにしながらも休日を共に過ごす相手になってくれていたのだが、苗字さんの話をすればするほど近況をぐちぐちと続けてしまって、これ以上はもうやめようとオーダーしてあったウーロン茶を口に含んだ俺に思いもしなかった指摘が飛んできた。
銜えていたストローを思わず離した。
自分で言うのも何だが、ある程度は何事もこなしてきたし女性に困った事もない。
そんな俺が嫉妬とは、なんの冗談だろう。