第10章 番外
名前で呼び慣れようと思っても、なかなか癖が抜けてくれない。
それに今更名前で呼ぶというのも少し気恥ずかしい。
「今から名前も黄瀬になるんスから、名前で呼んでくれないと」
そう、本日私は黄瀬になる。
自分の番を姓で呼ぶというのもおかしな話なので、これからは名前で呼ぼうと決めたのだ。
そして、番になる為の式がこれから行われる。
人生で一度きりしかない、人生最大のイベントだと思う。
今日私は結婚する。
愛して止まない彼、黄瀬涼太くんと。
「…似合ってるよ、涼太くん」
恥ずかしさで口ごもってしまったが、黄瀬くん…いや、涼太くんは満足そうに微笑んだ。
結婚が決まった日から、涼太くんは私を名前っちと呼ぶのをやめた。
初めは愛称からいきなり変わった呼び方にどぎまぎしたが、恋人は卒業だからと言って笑う涼太くんに改めて心を奪われた。