第10章 番外
物思いに耽っていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
どうぞとドアの向こうに声をかけると、姿を現したのは大好きな彼。
「う、わぁ…」
感嘆の声を漏らして顔を赤くしながら私を見る彼は、真っ白なタキシードに身を包んでいた。
少し短めに切り揃えられた髪は、きっちりと整えられている。
いつも格好良い彼だけど、今日は特別格好良い。
おかげで彼に負けじと私の顔も赤い事だろう。
「名前めちゃくちゃ可愛い…っていうか、綺麗」
褒められて顔が一層熱い。
照れを隠そうとしたけど、失敗してはにかんで笑った。
「黄瀬くんこそ、凄くかっこいい」
「だーめっスよ。今日からは黄瀬くんって呼ぶの禁止っス」
ゆっくりと私の元へ歩み寄ると、黄瀬くんは人差し指で私の唇を制した。
いけない、つい癖でいつものように呼んでしまった。