第6章 06
分かってる、俺はバカだ。
ただの逃げだと分かっている。
だからといってどうしろと言うんだ。
部活だってこの夏を最後に引退だ、おざなりにしたくはない。
苗字さんは大切だ。
しかしバスケも大切だ。
「諦めるなんて君らしくないですね」
「だって、どうしようもないじゃないっスか」
「ここで諦めたらきっと後悔しますよ」
ぐっと奥歯を噛み締めた。
苗字さんとはぎくしゃくとしたまままともに話していない。
このまま別れるのは俺も躊躇われた。
メールではなくて、電話でもなくて、俺がちゃんと見送りたかった。
隣の席からずっと見てきた、失いたくない人。
このままでいいはずはなかった。