第6章 06
苗字さんの出発は昼。
俺が学校に着く予定時刻も昼。
なんとかしたいとは思っても間に合うとは思えないし、会ったところで何を話していいのか分からなかった。
「黄瀬君は、本当に友達のままでいいんですか?」
突然の黒子からの質問に俯いていた顔を上げた。
真っ直ぐに俺を見る水色が、今の俺には眩しく感じた。
「友達のままでは手に入らないものがあるんじゃないですか?」
背中を押してくれた心強い友人に感謝して、弾かれたように走り出した。
向かう先は監督の部屋。
駆け出した俺の背中に頑張ってくださいと声を乗せて応援してくれる人が俺にはいる。
応える為に、なにより俺自身の為に走った。
気付くのが遅くなった自分を叱るのは後回しだ。
諦めきれないものが、俺にはある。