第6章 06
練習は別々だったので顔を合わせた時間は少ないというのに、俺の変化に気付いた黒子には流石としか言いようがない。
「俺、そんなに変っスか?」
「変というか、元気がないように見えます」
上辺だけ取り繕っても、分かる人には分かってしまうらしい。
久しぶりに話を聞いてもらおうと重い口を開いた。
高校三年、それも夏というおかしな時期に苗字さんが転校する事になった理由は、父親の仕事の都合らしい。
行き先は大阪。
今から一人暮らしをさせるのも忍びないとの事で、親の転勤に合わせて苗字さんも転校を余儀なくされたようだ。
出発は明後日。
俺が合宿から帰る日だった。
クラスの皆で見送ろうと話が出ていたのだが、どう考えても俺は行けそうにない。
見送るのも、この気持ちも、諦めようとしていた。
「君はバカですか」
あからさまに大きな溜息を吐かれて、バカの二文字が圧し掛かってきた。