第6章 06
あとは夏休みを待つだけという初夏。
朝練が終わって教室に戻っても苗字さんの姿がなかった。
俺より遅いなんて珍しいと思いながら現れるのを待ったけど、HRが始まるチャイムが鳴っても隣の席は空白のままだった。
休みかと思われた苗字さんは、HR始めるぞと言いながら教室に入ってくる担任教師と共に姿を現した。
嫌な予感がした。
どうして君はそこにいるの。
早く隣に来ていつものようにおはようと笑ってくれ。
HRの前にお前達に知らせる事があると言う担任が苗字さんに目配せをする。
俺たちの顔を見渡した後、少しの間を置いて担任が口を開いた。
「苗字が転校する事になった」
何を言われたのか分からなかった。
いや、分かりたくなかった。
普段当たりもしないくせに、どうして嫌な勘ばかり当たるのか。
苗字さんに彼氏が出来るかもしれない事は想定しても、在学中に離れる事は考えもしなかった。