第5章 05
もうすぐ授業が始まる時間なので、渋りながらも皆自分の席に戻っていった。
お互いの席に座っていた俺と苗字さんもいつも通り。
違ったのは俺の席から感じる君の温もり。
ほっこりして小さく笑った。
好きが溢れて止まらない。
「ところで黄瀬くん、ちゃんと勉強してる?」
うっと言葉を詰まらせてそっと隣を見た。
三年になってから初のテストがもうすぐある。
部活休止の連絡を受けていたのでテストの存在は知っていたが、勉強嫌いな俺はなかなか手がつけられずにいた。
つまり全くと言っていいほど勉強出来ていない。
「こ、これからやろうと思ってたんスよ」
言い逃れしようとしどろもどろにやり過ごすが逃がしてくれる訳もなく、むっとして俺を睨む苗字さんに若干仰け反った。
やばいとか怖いとか思うよりも先に、そんな顔も可愛いなと思った。
自分で思っているよりも重症のようだ。
「きーせーくーん?」
「本当に!本当にこれからやろうと思ってたんスよ!」
怒る苗字さんに慌てた。
けれどきっと君は仕方ないなって笑って勉強を教えてくれるんだって知ってる。
。